| Previous Page - Page 20 - Next Page [ 目次] 3―DNA量の変化 DNA量と遺伝情報は比例しない これまではアミノ酸やDNAの配列の進化をみてきたが、今度はDNAの量についてみていこう。 DNAには遺伝情報が刻まれているので、一細胞内に含まれるDNAの量が多いほど遺伝情報が多く、より複雑な生物がつくられると思われるかもしれない。しかし実際には、DNAの量と遺伝情報や生物の複雑さとは、必ずしも一致するものではない。 たとえば、ヒトの一細胞あたりのDNAの量が線虫の約四十倍になっているのは、うなずけるだろう。しかし、イモリのあるものはヒトの約五倍のDNAをもっているし、肺魚の一種はヒトの四十倍ものDNAをもっている。また植物でも、クロユリの一種のもつDNAはある種の草の約二百倍である。 これは、DNAの多くは遺伝暗号として働いていないからである。つまり、DNAの塩基配列のすべてがアミノ酸やタンパク質へと翻訳されているわけではないのだ。 ではいったい何のために、これらのDNAは存在しているのだろうか。 一つの理由として、次のようなことがいわれている。それは、大きな細胞ほど、成長したり分裂するために、どんなものでもいいから多量のDNAをもっているというのだ。 どうも細胞が大きいか小さいかは、個体の成長率や代謝率に影響しているらしい(細胞の大きさは体の大きさにも関係しそうだが、体の大きさには一個体あたりの細胞の数も関わってきているので、細胞の大きさだけが関係しているのではないようだ)。そのため、細胞の大きさの差は、その個体の適応度に影響し、自然選択の原因となると考えられるのだ。 これが正しいならば、DNAの量は自然選択によって適応進化するといえるだろう。しかし、ここでは別の理由を考えてみよう。 繰り返し配列の利己性と偶然性 DNAには同じ配列が何回も繰り返して存在していることが多い。前章の利己的DNAのところでも述べたように、K・Yというコピーがいくつもあるようなものである。 これにはいくつかのタイプのものがある。一つは、非常に類似した遺伝子のコピーが何個か存在しているようなものだ。たとえばヘモグロビンのβ鎖に関する遺伝子は六つあって、互いによく似た配列をもつが、そのうちの一つは現在では遺伝子として使われていない。この他、数百から数千もの長い塩基配列のコピーが十から百個存在しているものもあるし、短い配列が十万から百万ものコピーをもっているものもある。 このような繰り返し配列が生物の個体に何かしら役に立っているかどうかは、完全にはわかっていない。ただ、繰り返しDNAの遺伝暗号には、アミノ酸やタンパク質には翻訳されないものがあり、それらは生物個体の生存や繁殖には関係していないだろうと思われる。それらの一部は利己的なDNAとして、その配列自体の持つ機能によって、みずからのコピーを増やしているのかもしれない。だとすると、この繰り返し配列は、そのDNA自体にとってみれば適応的に進化しているといえるだろう。 しかし中には、どんな配列をもっているかとは関係なく、コピーを増やしていく機構が知られている。その場合は、その配列の持つ機能とは関わりなく、偶然に増えるわけである。つまりこれらのDNA配列は、個体の生存や繁殖に関係して広まったのでもなく、利己的DNAでもない。前節でみた遺伝的浮動と同様、偶然による進化の例とみることができるだろう。 Previous Page - Page 20 - Next Page [ 目次] |
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